IBD患者さんに対する新型コロナウイルスワクチン接種に関して、厚生労働省科学研究費 難治性疾患政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班と日本炎症性腸疾患学会(JSIBD)が共同で作成された「IBD患者における新型コロナウイルスワクチン接種に関するQ&A」が2月15日に報告されました。当院の方針も原則この内容に準じてご説明させていただきます。今後の情報の蓄積により内容は修正される可能性がありますのでご留意ください。下記に現在わかっていることを簡潔にまとめておりますが、詳細はJSIBDホームページ(http://www.jsibd.jp)をご参照ください。
- 日本に導入予定の3種類の新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社)はいずれも高い有効率が報告されており、感染の予防だけでなく、感染したとしても重症化しづらくなると報告されています。また、現時点で炎症性腸疾患の患者さんが一般の人と比較して新型コロナウイルスへの感染率が高いということは報告されていませんが、高用量ステロイド治療(プレドニゾロン換算20mg/日以上)は、COVID-19の重症化のリスクであると報告されています。さらに、厚生労働省は優先順位として(1)医療従事者等、(2)高齢者(65歳以上)、(3)高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方、と発表しています。この中の基礎疾患において、「ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている」と記載があり、免疫を抑制する薬の投与を受けている炎症性腸疾患の患者さんも優先接種の対象になると考えられます。新型コロナウイルスワクチンの長期的な安全性は不明であるなど、まだわからない点が多く存在しており、また、あくまでも接種は任意であることを踏まえて、個々の患者さんで新型コロナウイルスワクチン接種の可否を判断する必要があります。
- 現時点で日本に導入予定の3種類のワクチンのいずれも、免疫抑制状態での接種が禁忌ということにはなっていません。ただし、免疫を抑制する薬剤を投与されている患者さんにおいてはワクチンの有効性が低下する可能性があります。現時点では、免疫抑制薬による新型コロナウイルスワクチンへの影響は不明です。
- 新型コロナウイルスワクチンの接種により炎症性腸疾患が悪化する可能性に関しては不明です。現時点では新型コロナウイルスワクチンによる重篤な消化器系の副作用は報告されていません。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなどの一般的なワクチン接種後に炎症性腸疾患が悪化することは少ないと報告されています。